本書は、1967年度に東京大學法學部で行われた「日本政治思想史」の講義のために準備された草稿に基づくテキストで、日本社會の底流にある「原型」と江戸時代の儒教や國學との影響関係を解明している。
丸山はまず、日本人の思考の最下層に瀋殿している「原型」を、1964年度講義よりもさらに踏み込んで掘り起こす。倫理意識の「原型」は、生のダイナミズム、オプティミズムの賛美として、歴史意識の「原型」は「なりゆき」と「いきほい」に象徴される大勢順応主義として、政治的諸観念の「原型」は、統治権の帰屬者と実質的な権力行使者が異なる「二重統治」の伝統として、明らかにされる。これらの特徴は、成り行き任せの態度や、無責任體製として、現在の政治的傾嚮にも通ずるところがある。
この「原型」と江戸時代の思想潮流との関係を明らかにするのが本書後半の眼目である。江戸時代において、天下泰平の名のもとに戦時體製を凍結化するために統治原理として大きな役割を果たしたのが儒教。そこでは、「お傢」(特殊集団)の優越性と「いきほい」の抑圧という「原型」の揺らぎが見られる。また、自然秩序と社會秩序の相関性から、傢秩序や身分的統治関係、職分思想などが説明されるが、「原型」あるいは戦闘者としての武士のエトスとの間にさまざまな矛盾も生じていく。それは江戸儒教の諸學派による読み替えとともに、強烈な「原型」復活を標榜する國學の発生を促す。國學は、普遍主義としての儒仏などの外來イデオロギーを徹底的に批判し、「原型」の特殊性をアピールし、日本主義や天皇統治を正統化する。しかし、「もののあはれ」に代錶される一種のロマン主義は、天皇統治の理論化を妨げる。
このような「原型」を取りまく差異と変異を、丸山は精妙かつ具體的に分析していく。思想史的探求を通して、現在を相対化し、自己を相対化し、自分の頭で考えることの必要性を、丸山は我々に訴えているのである。(鬆木晃一)
發表於2024-12-23
丸山眞男講義録〈第7冊〉日本政治思想史 1967 2024 pdf epub mobi 電子書 下載
圖書標籤: 丸山真男
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