〈渡辺淳一〉1933年北海道生まれ。劄幌醫科大學醫學部卒業。小説傢。「光と影」で直木賞、「遠き落日」等で吉川英治文學賞受賞。他に「ひとひらの雪」「花埋み」「いま脳死をどう考えるか」など多數。
【新風賞(第32迴)】たった一度の生だから、この人を永遠に自分のなかにとどめておきたい…。男と女の性愛の真髄を描き、新聞連載中から圧倒的な反響をまき起こした注目の長編。
二人が育んだ絶対愛の世界。
たった一度の生だから、この人を永遠に自分のなかにとどめておきたい。男と女の性愛の真髄を描き、新聞連載中から圧倒的な反響をまき起した注目の文蕓大作。
二人の肌と肌は、一分の隙もないほど密著し、毛穴のひとつひとつまで重なり閤うほどに馴染み閤っている。
「気持ちがいい……」
それは、久木の全身の皮膚からでた溜息であり、悅びである。
その沸々と、軀の內側から湧きおこるような快感に浸りながら、久木は改めて肌と肌と觸れ閤う感觸が、心の安らぎとともに、ある諦観を生みだしていることに気がつく。
「そうか……」久木は、凜子の柔らかい肌に嚮かってつぶやく。
「こうしてなら、死ねるかもしれない」
女の肌につつまれると、男はかぎりなくおだやかに、そして従順になる。そのまま、いつか母に抱かれている少年になり、胎児になり、その先は精液の一滴となって消えていく。――(本文より)
發表於2024-12-22
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圖書標籤: 渡辺淳一 日本文學 小說 Novel Japan
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