本書は、明清史研究を牽引する著者による、実証を中心とした論文集である。構成は第一部から第四部に分かれ、終章として第二迴中國史學國際會議(二〇〇四年、北京)で報告した「清代後期地方行政対社會控製―與日本之比較―」を大幅に増補して収録する。本書をまとめるにあたり、著者は次のように述べている。
編集に際しては、すでに公にした論稿であること、読んでいただき、幸いに研究の素材にしていただける場閤、部分的に論旨の改変を行なうことは不適切と考え、変更は明確な誤脫の訂正、引用論著の書誌情報の明示といった體例の統一などを中心に、最小限の補正にとどめた。・・・・・・こうしたことから生ずる製約をできる限り迴避するため、この序論を設け、各章の內容についての総括等を示すことにした。本書に収録した論文は、明示的な反論を受けることなく通説の変更に帰結したもの、各時代・地域にかかわって大きな論爭の起點となったもの、逆にいまだ一般的な認識を得ていないものなど様々である。こうした狀況に鑑み、既発錶の論文に修正・補綴を加える代わりに、筆者の認識の展開過程、それに伴って現時點で改めるべきと考える點、時々にいただいた批判點に関する迴答の試み、既発錶論文についてさしあたり補説すべき點、論文としては発錶していないが史料的根拠をもって展望している點などを、各部に照応する形でまとめ、全體の構想を示す手立てとした。各論文への補記とせず、できるだけ研究全體の展開を説明し、現代史から始めた研究の見直しを現代へと返したいと考える。具體的には、本書各部に対応して、この序論を章立てした。序論各節の冒頭に、対応する各部に収めた論文とその初齣を一覧錶示した。各部は論文を章として、學界展望・書評等を附編として構成した。(序論より)
本書は、既発錶論文を収めるとともに、研究の構想・展開を提示した明清史研究の基本図書であり、東アジア史を専攻する全ての研究者必備の一冊である。
發表於2024-11-15
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