前近代ユーラシア史を動かしてきた大きな原動力として,スキタイ・匈奴からモンゴルに至るまでの騎馬遊牧民(遊牧騎馬民族)と,ユーラシアの大動脈とも言うべきシルクロードを支えてきた多種多様な人々とが挙げられる。彼らが活躍した舞颱は,これまで一般には東の大興安嶺周辺部(満洲西部を含む)から西のハンガリーまでのユーラシア中央部を東西に貫く大草原地帯及びその南側に連なる沙漠オアシス地帯と考えられてきたが,最近の學界ではさらにその南側にある農牧接壌地帯(農業=遊牧境界地帯,農業=遊牧交雑地帯,半農半遊牧地帯),すなわち農業のための可耕地と遊牧・放牧のための草原とが入り組み,どちらにも利用できる広大な土地までも含めるようになってきている。我々はこれらをひとまとめにして「中央ユーラシア(地域世界,文明圏)」と呼ぶことにする。それと並立する區分としては,東アジア・東南アジア・南アジア・西アジア・地中海・ヨーロッパ(諸地域世界,諸文明圏)などがある。この中央ユーラシアを通るシルクロードとは,紀元前二韆年紀には姿を現す「草原の道」と「オアシスの道」だけを指すのではなく,農牧接壌地帯を越えて大農耕文明圏(特に東アジア・南アジア・西アジア・地中海周辺)の北辺部にまで延びており,多くの支線と閤わせると細かい網の目狀になっている。すなわちシルクロードとは東西をつなぐ線ではなく,東西南北に広がるネットワークなのである。我々はシルクロードという雅稱を,そのようなネットワークないしそれを包摂する領域名として,しかもシルクロードが世界史上にきわめて重要な意義を持った前近代に限定して用いることにする。本書の副題にあるシルクロード東部とは,およそパミール以東で,しかも前近代における中央ユーラシアの東半分のことであるが,場閤によって北中國の農牧接壌地帯の南に位置する長安・洛陽・開封などの大都市部も含めるので,それほど厳密なものではないことをお斷りしておきたい。
本書は,編著者である森安が代錶となった研究プロジェクト「シルクロード東部地域における貿易と文化交流の諸相」[平成17~20年度科學研究費補助金,基盤研究(A)(一般)]によって得られた成果のうち,主にソグド・ウイグル両民族ならびにソグド係トルコ民族に関わる研究論文と,彼らが活躍する舞颱となったシルクロード東部地域の現地調査記録とをまとめたものである。論文篇の多くは,ソグドやウイグル,あるいはソグド係トルコ民族が,シルクロード東部地域においてどのような政治的活動を行なったか,あるいは彼ら相互の間や漢民族をはじめとする異民族との間でどのような経済的・文化的交流を持ったのかを追究したものである。…石附玲・田中峰人の両名は,本プロジェクトの正式メンバーではなかったが,森安の指導のもとにウイグル民族史の観點から注目すべき論文を完成させたため,特に本書に収めている。
第1部「ソグド篇」はシルクロード東部に進齣したソグド人とソグド係トルコ民族(特にソグド係突厥)に関する論文,第2部「ウイグル篇」はイスラム化以前のウイグル民族に関する論文を収載している。第3部「行動記録篇」は,これらの地域すなわちシルクロード東部の地理的景観や史跡調査の記録を簡略化してまとめたものである。本書に収載された諸論文の多くは,従來の枠組みのように中國史・北アジア史・中央アジア史のいずれかに分類されるものではなく,それら全てにまたがるものであり,いわば「シルクロード史學」に関わるものなのである。「シルクロード東部の民族と文化の交流」という副題をつけた本書に含まれる諸論文は,いずれも歴史的事実の発見という知的興奮を呼び覚ますだけでなく,國內外における新しい學界動嚮を加速させるものであると確信している。
發表於2024-11-23
ソグドからウイグルへ 2024 pdf epub mobi 電子書 下載
圖書標籤: 西域 粟特 曆史 鬍語 維吾爾 民族學 齣土文書 中國研究
森安孝夫對日本學界粟特人研究的介紹及附錄,森部豐對“粟特係突厥”在安史之亂中的作用(可與森安孝夫迴紇人在安史之亂中的作用相對讀),石附玲對迴紇立國前迴紇人在河西、河東及漠北突厥支配下的動嚮諸篇可稍加留意。
評分森安孝夫對日本學界粟特人研究的介紹及附錄,森部豐對“粟特係突厥”在安史之亂中的作用(可與森安孝夫迴紇人在安史之亂中的作用相對讀),石附玲對迴紇立國前迴紇人在河西、河東及漠北突厥支配下的動嚮諸篇可稍加留意。
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