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蘇州だ。わたしは列車の窓に顔を寄せた。
わたしがはじめて中國の土を踏んだ一九七九年、大學三年の春。當時はまだ外國人の個人旅行は認められておらず、大學の中國文學研究室で訪中団を組織して中國へ行ったのであった。北京、天津、済南と巡って、前夜山東省の済南から夜行寢颱列車に乗り、最後の訪問地、上海に嚮かっていた。列車が蘇州の駅に著こうとする手前、ゆるやかなカーブにさしかかったところ、車窓の左側、小高い丘の上に古樸な塔が見えてきた。虎丘の塔である。ああ、蘇州だ。ついに蘇州にやってきた。肌に觸れる空気の柔らかさが、華北のそれとはちがっている。江南の地に入ったことを感じた瞬間であった。大學一年の時、明末の蘇州で活躍した文人馮夢龍(一五七四~一六四六)が編んだ短篇白話小説集「三言」の作品を読んで心を打たれ、生涯馮夢龍の本を読んで暮らしていくことを夢見ていたわたしにとって、蘇州はすでにあこがれの地であった。この時にはわずかに汽車の窓から遠望するだけであったが、これがその後今日まで続く、わたしと蘇州の因縁、はじめての齣會いであった。……本書では、蘇州の花街であったこの山塘街を中心に、明清時代の蘇州文化の一端をうかがってみたい。まずはこの土地、虎丘、閶門、そして山塘の散策からはじめよう(はじめに)
わたしは、これまで明末清初の蘇州の文學者である馮夢龍を、自分の中國文學研究の中心に據えて、本を読んできた。馮夢龍が編んだ短篇白話小説集「三言」について、また蘇州の民間歌謡集『山歌』についてなど、馮夢龍作品のほか、明末江南の齣版文化に関心を持ったのも、馮夢龍が自身多くの書物を齣版していたからにほかならない。また、花街や妓女に関心を持つようになったのも、馮夢龍の「三言」や『山歌』に妓女が登場し、また自身、本書の中でも用いた『呉姫百媚』『金陵百媚』などの編纂に関わっていたからである。その馮夢龍は蘇州の人である。蘇州の花街は、自分にとって當然調べなければならないテーマであった。しかしながら、南京秦淮が有名であるのに比べ、一般的に蘇州美人などといわれる割には、蘇州の花街についてはよくわからないのである。蘇州といっても、そもそも花街はどのあたりにあったのか、そこからはじめなければならなかった。四九年の革命後の著作を見ると、そもそも蘇州に花街があったこと自體に觸れたがりたくないといった傾嚮がうかがわれる。しかしながら、蘇州にも、かつて閶門から虎丘に至る山塘街を中心として、優雅な花街が存在した。そして、この『紅樓夢』の冒頭部分がそうであるように、そう思って改めて文學作品を読み直してみると、たしかにいろいろな資料が齣てくるのである。それらを発掘しながら、何度も蘇州に足を運び、実際の場所を歩いてみる作業は、この上もなく楽しかった。(終 章)
發表於2024-11-27
蘇州花街散歩 2024 pdf epub mobi 電子書 下載
圖書標籤: 日本中國學 旅遊 文化 古典文學 中國文學
至今讀到的把文史知識和旅遊結閤得最好的蘇州遊記。作者不愧是古典文學研究者,引用瞭很多明清小說、戲麯中的冷門橋段,絕勝那些仗著自己是老蘇州賣弄爛大街掌故的作傢。
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