戦後の思想界を常にリードしてきた巨人、丸山真男が、1948年に東京大學法學部で行った「日本(東洋)政治思想史講義」を再現している。大學の講義といういわば「密室」での知的葛藤の場を、50年を経た後に1冊の書物にまとめるというのは、並大抵の作業ではないだろう。むろん録音テープがあるわけではない。丸山自身の綿密な講義原稿、學生の筆記ノート、プリントを基に當時の講義の內容が復元されている。戦後の決定的な物資不足という狀況のなかで、いっさいの妥協を排して丸山が語った內容は、時を越えて、緊張感に満ちたひとつの「場」としての生々しさをもって迫ってくる。
本書では、徳川封建製の精神的基盤を分析し、それが崩壊していった過程を思想麵からたどっている。「いかなる歴史的認識も一つの自己認識である」と述べる丸山が、戦後のさまざまな意味での悔恨を肌で感じている48年という時期に、自己批判の一環として封建製からの脫卻の問題に目を嚮けていた點には注目される。徳川封建製を過去の遺物として扱うのではなく、今まさに「我々自身のなかにさえ巣食っているもの」、リアルな現実として捉えようとしているのである。
日本が「近代化」を特殊な形で素通りしてきたという歴史的事実がある以上、丸山真男が本書で取り組んでいる問題というのは、なおも切実な有効性を保ち続けていると言えるだろう。(三木秀則)
發表於2024-12-29
丸山眞男講義録〈第1冊〉 2024 pdf epub mobi 電子書 下載
圖書標籤: 日本 丸山真男
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